一般研究プロジェクト
A16-1 アジアの高等教育におけるCLIL(内容・言語統一型学習)の応用と実践(2016-2017年度)
構成員 | |
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代表研究員 | 入江恵 |
研究員 | オニール・テッド マクレガー・ローラ 野崎与志子 マーチャンド・ティム |
客員研究員 | 藤田玲子 |
(1)研究の目的・意義
本研究の目的は、英語を公用語としないアジア諸国の大学においてのEMI(English Medium Instruction、英語を媒介言語とする教学)の為のブリッジ(準備)プログラムの実態を比較調査することにある。中でも近年世界的に広まりつつある教育手法、CLIL(Content and Language Integrated Language Learning、内容・言語統一学習)の応用に焦点を当て、各国及び大学でCLILがどのような形で採択・実践されているかを調査し、今後の日本の大学における効果的なブリッジプログラムの開発を考える。
世界的に大学のグローバル化が求められている昨今、カリキュラムの国際化、とりわけEMI導入による「教育の英語化」は英語を公用語としないアジア諸国でも広がりを見せており、多くの日本の大学とっても喫緊の課題となっている。国内において、全てもしくは大半の授業を英語で行う大学や学部の数は増加傾向にある。本学においても、26年度に開設される新学部において英語による専門科目が多く開講され、一定単位数をこれにより満たすことが卒業要件となっている。このようなEMIを主軸としたカリキュラムは、入学試験によりすでに高度な英語力を持っている志願者のみを選抜することで可能となる。しかし日本の一般的な高校における英語教育を考慮した場合、その英語力を持つ志願者数は限られるのも事実であり、多くの場合は、一年次から英語による大学レベルの専門科目授業を受講することは難しい。そして授業そのものの質を保証することは厳しいと言わざるを得ない。そこで重要な意味を持つのがブリッジなどと呼ばれる準備教育である。これは主に母国語(日本語)による専門領域への導入とアカデミック英語の強化を指す。このブリッジ教育の中で現在注目を浴びつつあるのがCLIL(Content and Language Integrated Language Learning、内容・言語統一学習)である。1990年代にヨーロッパで開発されたこの教育手法は外国語教育を中心に、アジア諸国の大学教育でも取り入れられ始めている。これは外国語教育の成果がより求められる中、英語を学ぶのではなく、英語を使って内容を学ぶことの効果が認められているからである。しかし、CLILは様々な要素が組合わさった教育法であるがゆえ、その応用方法は国や教育機関によって大きく異なる。国内を含めアジアにおける様々な事例を研究することにより、 日本の大学においてCLIL導入の意義そして導入の際に考慮するべき事項、最も相応しい形態のCLILとは何かを考えることは、これからの言語教育の向上及び大学教育のグローバル化において必然であろう。
(2)研究内容・方法
日本を含む英語を公用語としないアジア諸国において、英語による教育を行い、且つ準備教育(ブリッジプログラム)を行っている大学のリストを作成する。中でもCLIL教育法であると明確に公表している高等大学期間及び準備教育機関に関する文献及び視察・聞き取りを通して採択の経緯、位置づけ、そして実態について情報収集を行う。
第一段階としてまずは、池田真氏(上智大学)の分類法を用いてその実践方法タイプ別に整理し、アジアの高等教育におけるCLILの分布を把握する。その次の段階として、形態の違いを生み出している社会的、文化的、言語教育的要素を考察する。最終的には各実例の成果と問題点を整理し、大学レベルにおけるCLILが果たせる役割を考究し、報告書にまとめ公表をする。「調査研究報告」としての出版を予定。これ以外にも積極的に学会などでも発表を行う。
(3)成果報告の計画
調査研究報告書としてExploring the Potential of CLIL in Higher Education in Asiaを出版予定である。