学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

A21-2 日本植民地下初等・中等教育諸学校の記録と記憶(2021年度)

 

構成員
代表研究員 梅野正信
研究員 斉藤利彦
客員研究員 諏訪哲郎 市山正美 大浜郁子
(1)研究の目的・意義

戦前期の学校教育に関する記録や記憶に関する研究は少なくない。しかし,旧制大学や旧制高等学校学生を対象とした研究に比して,初等学校および旧制中等諸学校生徒の認識に関わる研究は必ずにしも多くない。また,本研究が対象とする日本による植民地下の初等・中等教育諸学校の記録と記憶を対象とする研究は,植民地教育史研究として取り組まれた研究成果を含めても,多いとはいえない。初等学校は,日本国内においては,国民教育となっており,植民地においても,一定数の児童が在籍していた。また,戦前の中等教育学校は,進学率が昭和初期でも10%前後であり,植民地下では,日本国内出身者(いわゆる「内地」出身者)と比して,さらに低い進学率であったが,それでも,個人や大学・高等学校の学生と比べより広範な層が在籍していた。植民地下における日本国内出身者である児童・生徒と,総督府統治の被統治者,あるいは実質的な被被統治者(旧中国東北部等)の子弟であった児童生徒の,当該時期の記録(校友会雑誌・日記等)と,今日に生活する人々の記憶とあわせて調査・分析することの意義は,少なくない。

(2)研究内容・方法

本研究では,各年度の前半期に,これまで申請者らによって収集してきた国内外の初等・中等教育諸学校の校友会雑誌,同窓会誌等の記述内容を精査し,韓国,台湾,中国,の研究者から協力と助力をえながら,台湾,朝鮮半島,中国出身者の学校教育体験(日本「内地」における学校教育体験も含む)の聞き取り作業を行い,各年度の後半期に記録の整理,考察を行い,最終年度後半期に,研究成果の刊行に向けた作業を行う。
 日本の統治下,実質的統治下にあった台湾,朝鮮半島,中国(とりわけ旧中国東北部)出身者の,当該地域における学校教育体験,限られた児童生徒の日本国内における学校教育体験,日本国内出身者による植民地下被統治地域での学校教育体験につき,当該時期の記述分析,今日における聞き取りを通した戦前期の学校教育を見直す作業の重要性はもとより,対象となる人々の多くが90歳を超える現段階が最後の機会となることも,本研究の必要性として加えておきたい。