一般研究プロジェクト
A26-3 空気を読む(KWY)能力の可視化:KWY尺度の開発と東アジア地域への応用可能性の探求
| 構成員 | |
|---|---|
| 代表研究員 | 金素延 |
| 研究員 | 柴田友厚 |
| 客員研究員 | 鄭有希 |
(1)研究目的および意義
本研究は、日本社会、特に組織文脈において中核的な概念とされる空気を読む(Kuuki-wo-yomu,以下KWY))を測定可能な信頼性・妥当性の高い尺度として開発・検証することを目的とする。また、開発された尺度が他の文化圏にも適用可能かどうかを探求することで、KWY概念の文化的特異性と普遍性この両側面を理解することを目指す。KWYとは、言葉にされない社会的な雰囲気や規範を敏感に察知し、それに適切に対応する能力を指し、日本の組織内においては極めて重要な対人スキルとされている(Jung, Kim, & Tanikawa, 2023)。先行研究では、KWYが知覚、態度、行動の三次元で構成されることが示されているが、これを客観的に測定可能な標準化尺度は未だ存在していない。尺度が存在しないことは、KWYが日本固有の文化的概念としてのみ捉えられることを助長し、国際的な比較研究や多様な組識環境におけるKWYの影響力を分析することを困難にしている。実際、KWYは日本国内のみならず、韓国、台湾、シンガポールなど、ハイコンテクスト・コミュニケーション文化を共有する東アジア諸国においても有効に機能する可能性があると考えられている(Hall, 1976)。 したがって、KWYの測定尺度を開発し、妥当性を検証することは、学術的・実践的の両面において大きな意義を持つ。学術的には、KWYのような文化固有の概念に明確な構造と測定可能性を付与することで、定量的研究を促進し、文化間比較研究の基盤を提供するとともに、日本文化に根差した行動概念および理論の発展に寄与することが期待される。実務的には、組織内におけるKWYの能力を客観的に評価し、それを基にカスタマイズされた教育・研修プログラムの開発を通じて、組織の効率性向上に資する。また、日本企業と連携する海外企業にとっても、KWYの理解は成功裏のビジネス関係構築において実践的に有用であり、最終的には多文化環境における円滑なコミュニケーションの促進にも貢献するものである。
(2)研究内容および方法
本研究は、日本の文化的文脈から派生したKWYという概念に対する理解を深化させるとともに、これを実証的に測定可能な尺度として開発し、最終的には文化間比較研究に応用可能な形へと拡張することを目的とする。KWYは、暗黙の了解や社会的文脈に基づいた社会適応能力であり、日本社会や組織においては対人関係の調整や意思疎通に不可欠な能力とされている。KWYは日本国内にとどまらず、韓国、台湾といったハイコンテクスト・コミュニケーション文化を共有する東アジア諸国においても、有効に機能する可能性があると考えられている。 しかしながら、従来このような文化的能力は主観的にしか把握されておらず、科学的・客観的に評価することが困難であった。これまでのKWYに関する研究は、社会学的や文化人類学的な理論的なアプローチに依拠してきたが、近年のJungら(2023)による研究において、KWYの下位次元モデルが提案されたものの、いまだに定量的な測定ツールとしては確立されていない。したがって、本研究はこうした既存研究の限界を補い、KWYという文化概念を測定可能な心理構成要素として理論的に明確化し、実証的に再定義することも狙いの一つである。 このような問題意識に基づき、本研究では尺度開発における標準的な手続きを踏まえ、2年間にわたって段階的に進行する多層的な尺度開発および妥当性検証のプロジェクトとして構成されている。最終的には、理論構築・測定・比較応用という三層の目的を統合することで、KWYの概念を学術的にも実務的にも有効な知見へと昇華させることを目指す。研究設計においては、量的および質的手法を適切に組み合わせ、尺度の信頼性および妥当性を高い水準で確保することを目指す。研究は主に二つの軸を中心に構成される。第一に、KWY尺度の開発および構成概念の統計的妥当性の検証である。Jungら(2023)が提唱したKWYの3次元モデルを基に、組織文脈に特化したKWY尺度を構築し、初期項目生成、予備調查、探索的因子分析(EFA)、本調査、確証的因子分析(CFA)を経て最終的な尺度を完成させる。 第二に、尺度の妥当性の多面的な検証および他文化圏における適用可能性の検討である。開発された尺度に対して、収束的妥当性、弁別的妥当性、基準関連妥当性、予測的妥当性を確認し、心理測定上の精度と汎用性を確認する。さらに、韓国など文化的に類似した東アジア諸国において同尺度を適用し、測定の等価性(測定不変性)を検証することで、KWY概念の文化的特異性と普遍性を明らかにする。各段階では、質問紙調査、専門家によるデルファイ法、統計分析などの手法を適切に活用し、尺度の信頼性・妥当性の向上を図る。



