学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

日本とタミルの言語と文化の比較研究(1986-1987年度)

 

構成員
代表研究員 大野晋
研究員 下宮忠雄
客員研究員 M.Sanmugadas 松原孝俊
(1)研究の目的・意義

この研究の目的はインド最南部のタミル州、スリランカ北部のタミル語地域に行われているタミル語とタミル文化とが保っている日本語及び日本文化との関係を明らかにすることである。
この研究については大野はすでに"Sound Correspondences between Tamil and Japanese"(学習院叢書1980)を書いている。日本の学界においては多くの非難がこれに対して投げられたことは周知のことである。しかし、世界に知られたドラヴィダ語学者であるオランダのユトレヒト大学のK. Zvelebil教授はロンドン大学のBSOAS(1985 Part1)において大野の研究について6ぺージにわたって評論を加え、大野の数数の誤りを指摘したが、同時にこの研究の意味を評価し、単なる偶然とは見られない証拠が挙げられていることを認め、ドラヴィダ語学者、アルタイ語学者、日本語学者の緊密な協力による研究の推進を提唱している。またチェコスロバキヤのカレル大学のVacek教授も私信において協同研究の必要を説いている。
この研究によって日本語の由来、日本文化の淵源について従来全く予想もされなかった事柄が明らかになりつつある。

(2)研究内容・方法

(1)タミル文学はB.C.2世紀からA.D.2世紀にわたる、Sangam時代の2500の長い歌をはじめとする数々の古典文学及びB.C.5世紀の著といわれる文法書を有している。それらの含む語彙と、日本の古典文学における語彙とを全面的に比較し、音韻法則に支持される比較語彙を推定する。この研究において、さきにはマドラス大学助教授Pon Kothandaraman博士、最近ではジャフナ大学教授A. Sanmugadas博士夫妻の協力を得て来たが、今後も協同で研究を進める予定である。この際比較言語学に関して下宮教授の指導・協力を仰ぐ。
(2)文化人類学の観点からの研究によって、日本の小正月の行事に全く対応する行事がタミル語地域に行われていること、結婚に関する慣習が極めて類似すること、葬儀に関する古代日本の慣習がタミルと一致することなどが明らかにされつつある。今年は小正月行事について青森県、新潟県などに現存する習俗を調査記録して、インド・スリランカの行事との対応を一層精しく明確化する。そのための調査旅行及び資料の整理を行う。

(3)研究の成果

菅野裕臣『動詞アスペクトについて(I)(調査研究報告No.29)』(学習院大学東洋文化研究所、1990年9月)

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