学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

アジアの祭りと芸能(1989-1990年度)

 

構成員
代表研究員 諏訪春雄
研究員 吉田敦彦 新川哲雄 諏訪哲郎
客員研究員 徳田和夫 黄強 田仲一成 林田史子
(1)研究の目的・意義

近ごろ宗教的なものに対する関心が一般的に強まっている。しかも、それは、既成の仏教、キリスト教などの体系化された宗教に対するよりも、むしろ、日本人の感情のひだに伝えられていた原信仰とでも称すべきものに対する関心である。
古来、日本人は、自分たちをとりまく自然の環境の至る所にカミの姿を見つづけてきた。日本人は山麓や浜辺に鳥居を建て、森の樹や海の岩礁に縄を張って、自然をカミの世界と観念してきた。明治以来の近代化はこのカミの風土を破壊してきた。最近の宗教的なものに対する関心の高まりは、このような日本の近代化に対する反省の上に生まれてきている。
本プロジェクトは、日本人の宗教心、カミ観念をアジア諸民族との比較を通して明らかにしようとする。文化人類学、比較宗教史など、最近の文化諸科学によるこの方面の研究はめざましい成果を挙げている。それらの成果の摂取の上に、我々は、アジア各地の祭りと芸能という確実な手掛かりを通して、日本人の文化と信仰の実態を解明しようとするものである。

(2)研究内容・方法

祭(祀)りは儀礼、儀式、祝祭、祭儀などとかさなりあって用いられることばである。その意味内容は厳粛な儀礼から反秩序の祝祭やカーニバルまでかなり広範囲にわたるが、いずれにしてもカミと人が交流する場であることに変わりはない。
一方、芸能は、その祭りの場に出現したカミの行状を表現し、カミの意志をわかりやすく確認し、説明する人間の側の行為である。信仰やカミ観念という実態の容易にとらえがたい事象を具体化し、顕在化する確実な形式として、祭りとともに芸能は存在する。
本プロジェクトはこの祭りと芸能という具体的な形式に表現されたアジアの諸民族の宗教感情を日本人のそれと比較することによって、日本人の文化と生活の特色をとらえようと意図した。
さいわいにして本プロジェクトの構成員は、それぞれの専門領域で、すでにこの研究テーマにかかわる業績を挙げている人たちである。それらの業績を検討、綜合するだけでもかなりの研究業績を期し得るはずであるが、さらに、内外の専門家、有識者を招いて意見を聞き、また各方面に伝手を求めて、可能なかぎりフィールドワークをも実施して、より精密な、広範囲の研究成果を挙げようと考えている。
さしあたっては、日本の古代祭祀と、その遺存形態の民俗祭祀に焦点を当て、芸能では神楽と仮面劇を中心に研究を進める予定である。

(3)研究の成果

田仲一成・諏訪春雄・河野亮仙・猪野史子・佐佐木隆・黄強『アジアの祭りと芸能(調査研究報告No.37)』(学習院大学東洋文化研究所、1992年3月)

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