学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

東アジアの近代化における「中産階層」育成と中等教育の関連構造の比較研究(1990-1991年度)

 

構成員
代表研究員 斉藤利彦
研究員 鈴木敦省 佐藤喜久雄
客員研究員 石川啓二 蔭山雅博 雨田英一
(1)研究の目的・意義

近代化達成のための国民的基盤の問題を、階層論の視点でとらえるならば、M.Weberの指摘を待つまでもなく、健全な中産階層の育成こそがその最も重要な課題の一つであったことは言うまでもない。そうした課題意識は我が国においても森有礼の「中等人物論」や徳富蘇峰の「平民主義」等に見られ、また中国においても蔡元培(北京大学学長)の「中等普通教育論」や「女子教育論」さらには黄炎培(中華職業教育社社長)の「職業教育論」等に、その自覚的な論理形態をとって現れていた。同時にそうした中産階層育成論が明確な「教育論」であったことを見逃すことはできない。自生的な中産階層が形成されていなかった後発諸国にとって「造出」されねばならないものとしてあったのである。
本研究は、東アジアとりわけ日本と中国における中産階層育成の歴史的態様を、中等教育の人材養成システムの比較という観点から解明しようとするものである。この研究は、今日の日本と中国の政治的・文化的達成の相違を、中産階層の成熟度という角度から歴史的にとらえるための基礎的研究としての意義をもつものである。

(2)研究内容・方法

以上のような課題を達成するため、本研究は次のような内容と方法をもつものとする。
1)自国(日本と中国)の歴史と伝統に根ざして、中産階層育成へのいかなる構想が存在したのかに関する思想史的アプローチ。時期の設定としては、自国の近代化への構想が未だ新鮮な形で提起されていた明治期(日本)および20世紀初頭(中国)を主に対象とする。
2)中産階層育成への志向が、どのように中等教育の制度論へと結びつき結実していったのかに関する政策・制度史的アプローチ。
3)以上の思想史的あるいは政策・制度史的アプローチに加え、本研究の内容・方法の重要な特質としてそれら思想・制度が実際にいかに機能し、いかなる質の中産階層を形成し得たかの実態論的アプローチを行う。
4)以上を通じて、日本と中国の中産階層育成との関連歴史的実態の相違を、両者の社会的・文化的基盤や伝統の相違を十分に考慮しつつ比較検討し、それぞれの特質と効果とを解明する。

(3)研究の成果

斉藤利彦・雨田英一・石川啓二・蔭山雅博・桜井啓子『アジアの中等教育―その歴史と現状―(調査研究報告No.40)』(学習院大学東洋文化研究所、1993年6月)

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