学習院大学 東洋文化研究所The Research Institute for Oriental Cultures

研究プロジェクト

一般研究プロジェクト

相互イメージの計量的解析による日韓政治文化摩擦の考察(1991-1992年度)

 

構成員
代表研究員 田中靖政
研究員 田中伸英 岩城宏明 窪田誠
客員研究員 越田稜 森田芳夫 平野浩 鄭求宗
(1)研究の目的・意義

この研究は、(1)社会心理学的な手法を用いて日本人と韓国人がそれぞれ相互に抱くイメージを実証的に測定し、多変量解析法ならびにエントロピー測度(H)によって計量的な解析を行って、政治文化摩擦の一因を形成する知覚ならびに価値観の構造上の差異を明らかにし、(2)これらの分析結果に基づいて異文化コミュニケーションの心理的側面における問題点を考察し、あわせて(3)日韓両国民の間の異文化間コミュニケーションを改善するためのコミュニケーション戦略策定のための検討を目的としたものである。
上記の目的を達成するために、この研究においては日韓両国の計量的データ解析をより広い歴史的、文化的視野からも妥当なものとするため、心理学、政治学、計算機科学の専門家に加えて、韓国人訪問教授を含む日韓関係の専門家を研究員に加え、学際的かつ国際的研究チームを編成することとした。
この種の実証研究は、日米、日豪、米ソ、米欧、日米欧などの間ではすでに幅広く実施されているが(例えば、辻村明他編「世界は日本をどう見ているか」1987)、韓国との間ではほとんど行われてきていないのが実情である。したがって本研究は、社会・行動科学分野において学問的に貢献するだけでなく、日韓両国間の異文化コミュニケーションに関心を持つ研究者や実務家に対しても有用な基礎データを提供できるものと考えられる。

(2)研究内容・方法

 〔概念の選定〕
この研究では刺激として「国名」(日本、韓国、アメリカ、ソ連、中国など)と、どの国にも共通する「一般概念」(首相、国民、製品、核兵器、原発など)、および両者の組み合わせである複合概念(日本の首相、韓国の国民、アメリカの製品、ソ連の核兵器、中国の原発など)を用い、それらから得られる反応を体系的かつ計量的に分析する。「国名」は日韓両国に関係の深い環太平洋地域から選定する。
 〔被験者〕
この研究では、日本人と韓国人の比較に加えて、日本で生まれた韓国人を日本人と韓国人に比較するために、日本人高校生男子100名、女子100名、在日韓国人高校生男子100名、女子100名、在韓韓国人高校生男子100名、女子100名、合計600名を被験者として用いる予定である。
 〔分析の方法〕
分析は刺激概念から抽出された連想語の意味の統計的特徴を分析する「連合法」と、刺激概念の意味を心理学的尺度上で評定する「尺度法」を併用する。「連合法」においてはShannonのエントロピー測度(H)とNobleの「有意性測度」(m)による「意味」および「価値観」の計量的解析を行い、また「尺度法」においては因子分析とクラスター分析を用いて「意味」および「価値観」の構造分析を行う。

(3)研究の成果

田中靖政(編著)・鄭求宗・朴龍根・兪炳宇・李度珩・平野浩・窪田誠・岩城宏明『相互イメージの計量的解析による日韓政治文化摩擦の考察 (調査研究報告No.42)』(学習院大学東洋文化研究所、1995年11月)

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