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公開: 2011年6月18日 / 最終更新日: 2011年12月22日

放射線と原子力発電所事故についてのできるだけ短くてわかりやすくて正確な解説

この事故ってやばいの? もっとひどいことになるの? そうしたらどうすればいい?

このページの目次

やばいです

でも、原爆にはならない

原子力発電所のその後の様子

原子力発電所が「冷温停止状態」になって事故は「収束」したのか?

また事故があって放射性物質漏れたら?

やばいです

三つの原子炉が(部分的に)こわれ、もう一つの原子炉でも使用済み燃料がひどいことになった。 要するにめちゃくちゃ。

原発の近くは本当にひどく放射性物質に汚染されたから、ずっと長いあいだ人は暮らせない。 住んでいた人たちも帰れない。ものすごく悲しい話だ。

原発から離れていて人が住んでいるところも、かなり放射性物質に汚染されている。 住んでいる人たち、特に子供の健康に影響が出ないよう細心の注意が必要だ。

原発から出た放射性物質のため、広い範囲で農作物、食肉、魚などが汚染された。 汚染のひどい食品を食べ続けると健康に影響がでる可能性があるから、これは日本中の人にとって大きな問題だ。

東京あたりにいると事故の悲惨さを実感していない人に時々出会う。そういう人にも、「JR の常磐線と常磐自動車道がどちらも部分的に通れなくなっていて、通れるようになる見通しはまったくない」と話すとびっくりする。 でも、そんなのはこの事故のひどい影響のごくごく一部なのだ。

事故から 10 ヶ月近くたって原子炉の様子はかなり落ち着いてきたようだ。 でも、現場ではまだまだ「綱渡り」的な応急処置を続けているだけで、本当にきれいに収束させる見込みはまったく立っていない。 そもそも、原子炉の中で燃料がどういう風になっているのか誰にもちゃんとわかっていないのだ。 (それにしても、現場の人たちの努力はすごい! 2011 年 3 月にはつづけて爆発があったけれど、その後は、大きな爆発はおきていない。 これは奇跡的なことなんじゃないのか?)

世界の歴史に残るひどい事故だし、まだ解決していない。まだまだ何ヶ月も、いや、何年も何十年もつづく。 これを読んでいるみなさんやぼくが生きているあいだには、この事故は終結しないだろう。 本当にやばい事故です。

どう「やばかった」かをもう少し(いくつかの用語は、「原子力発電所ってけっきょく何をやっているの? 」で説明する。ここだけ読むときは軽く読み流してもいい)。

原発事故で最悪なのは「核分裂の連鎖反応」というのが止まらなくなって、ものすごい爆発をおこし大量の放射性物質をまき散らしてしまうことだろう。今回は、連鎖反応は止まったので、この「最悪の事態」だけはまぬがれた。

だが、それ以外はことごとくダメだった。 連鎖反応が止まったあとも、燃料棒に残った放射性物質はずっと発熱し続けるので、徹底的に冷やさなくてはならない。 しかし、冷却に失敗した時期があり、燃料棒はすごく熱くなって、とけ落ちてしまった。 また、燃料棒には危険な放射性物質がたくさん含まれているので、それが外に漏れないよう二重の容器のなかに厳重に閉じ込めておかなくてはならない。 しかし、色々なところがうまくいかず、容器のあちらこちらから放射性物質が外に漏れだしてしまった。

また、原子炉を冷やすのに使った水は放射性物質に汚染されるので、外に捨てずきちんと保管しておかなくてはならない。 しかし、水がいろいろなところから漏れてしまい、海水(そして、おそらくは地下水)を汚染してしまった。 2011 年 7 月より前は、汚染された水がどんどん増えていくのが大問題だった(2011 年 7 月以降は少しはマシになったが地下水の汚染の問題は消えていないと思う)。

2011 年 3 月には原発から 30 キロメートル以上も離れた土地まで放射性物質でひどく汚染されてしまった。 しかし、汚染がこの程度におさまっているのは幸運なことだったのだ。 事故発生のすぐあと、原子炉からもっとも激しく放射性物質が漏れていた頃には、福島付近では西風が吹いていて、放射性物質はほとんどすべて海に向かって運ばれていった。 もしこのときに陸に向かう風が吹いていたら、はるかに広い地域がもっともっと激しく汚染されてしまっていたはずだ。 これは想像するだけで怖ろしいことだ。

今、いろいろなところで放射性物質を取り除く「除染」の活動が進められている。 この解説を読み進めていけばわかってもらえると思うが、除染は実際に有効だし、すごく重要な活動だ。

しかし、除染を進めると、取り除いた放射性物質をどう処理するかという問題がでてくる。 「放射線とか放射能ってなに?」で詳しく説明するけれど、放射性物質の放射能をさっさと取り除いて無害にしてしまう方法は一つもない。 ただ、時間が経って放射性物質が勝手に崩壊してくれるのを(何十年も)待つしかないのだ。

そうなると、ぼくらは大量の放射性物質をどこかにずっと保管しておかなくてはいけない。これが大問題。

人があまり来ない場所にかためるとか、地面の深いところに埋める(放射線は地面でかなりさえぎられる)といった方法もあるだろうが、放射線が強い場合はそれではダメだ。 おそらく、もっとも能率的なのは、原発の近くの土地を政府が買い上げて、そこに各地から集めた放射性物質をまとめて保管することだろう。 もちろん、これは「原発の近くには半永久的に人が住めない」ことを前提にした方法だから、近くに住んでいた人たちの気持ちを考えると、実行するのはものすごく辛い。 でも、実際のところ、原発の近くに百年近く人が戻れないのはもはやどうしようもない事実になりつつある。 政府はできるだけ早く、この辛い決断をすべきなのだ。

上に書いたように、この原発の事故は、これから何年、何十年、あるいは百年という長い年月をかけて処理していかなくてはいけない。 これまでの日本の歴史のなかで、百年後にまで影響が残ってしまうような事故があっただろうか?  そう考えると、これがどれだけ「ひどい話」なのかがわかると思う。

事故から半年以上が経って、少なからぬ人が原発事故のことを気にしなくなり始めているような気がする。 政府も、事故が収束してきているような雰囲気を一生懸命に作ろうとしているように見える。

しかし、人々のあいだでの意見や空気がどうなろうと、「収束に百年以上かかる事故がおきてしまい、事故現場ではあいかわらず綱渡りの危険な作業が続いている」という事実はまったく変わらない。 日本中の人が原発事故のことで気を揉み続ける必要があるとは思わないけど、その事実だけは忘れない方がいいと思う。

個人的な意見を書かせてもらうけれど、これほどの規模の事故がおきてしまったのに、未だに東京電力が中心になって事故の処理をしていることは、ぼくにはまったく信じられない。 この事故はすでに日本全体に大きな打撃を与えてしまったわけだが、これから先の長い長い事故処理にもたっぷりと資金と人材を使って慎重に取り組まなければ、またしても大きな災害を招いてしまいかねない。 しかし、あくまで一つの企業である東電が中心になっているかぎり、資金が足りなくなれば理想的な工程をあきらめて安上がりの処理をしてしまうかもしれない。 そもそも、東電は本当に百年といった長期的なビジョンをもって事故処理ができるのだろうか?

企業というのはあくまで利潤を追求する組織だ。 これほど長期間にわたり、また、日本中への(というか、世界への)影響の大きいプロジェクトを企業にまかせていいのだろうか?  政府は、もっともっと早い時期に原発事故を処理するための国の組織を作るべきだったと思うし、これからであったとしても、少しでも早くそういう方向に向かうべきだとぼくは信じている(しかし、まったくそういう兆候はない。ぼくは、何か考え違いをしているのだろうか? ぼくが間違っていないとして、どうやれば政府を動かせるのだろう?)。

でも、原爆にはならない

上で書いたように「やばい」事故ではあるけれど、マンガなんかであるみたいに、原爆(原子爆弾)になって大爆発してまわり中がが吹っ飛んだり、すごい毒ガスとか殺人放射線がでて人が「ぎゃ〜」と言って次々と死んでいったりはしていない。

今後も、どれほど事態がまずい方に進んでも、そういう原爆とか「ぎゃ〜」とかにはならないと思っていい。それだけは安心。

[fission] 「原爆にはならない」と言い切るのはもちろん理由がある。

あとで簡単に説明するが(「原子力発電所ってけっきょく何をやっているの? 」)原子炉でも原子爆弾でも、ウラン 235 の核分裂の連鎖反応を利用してエネルギーを取り出している(右の図が核分裂の「イメージ映像」)。 天然のウランというのは、ほとんどがウラン 238 という核分裂しない物質で、そこにわずかにウラン 235 が混ざっている。 このままでは連鎖反応はおきないので、すごい手間をかけてウラン 235 の濃度を高くして、それを原子力発電所や原爆に使っているのだ。

ただし、原爆の場合は、連鎖反応をすごい勢いで(文字通り、爆発的に)おこしたいので、すごく苦労してウラン 235 の濃度をめいっぱい高くする。 原発では、あまり激しい連鎖反応おこると困るので、それほどまでには濃度を高くしない。 つまり、「燃料の純度」がもともとぜんぜんちがうのだ。

すでに燃料棒がとけ落ちたりいろいろと困ったことがおきているが、何があろうと、ウラン 235 の濃度が勝手に高くなることは絶対にない。 だから、原爆にはならないと言い切れるのだ。

ちなみに、再臨界(核分裂の連鎖反応が再び始まってしまうこと)の危険性を指摘している人もいる。 ぼくも、短時間の小さな再臨界の可能性はゼロとは言えないと思っているけれど、それがおきたとしても原爆にはならないのでご安心を。

原子力発電所のその後の様子

事故から 10 ヶ月近くが経った。 現場で働く人たちの素晴らしい努力のおかげで、最近は爆発などの騒ぎもなく原発が安定してきたようにみえる。 また、(燃料そのものの温度は不明だが)原子炉の温度もかなり下がって安定してきた。

特に、2011 年 7 月のはじめには「循環注水冷却」という新しい方法で原子炉や使用済み燃料プールを冷やせるようになった。 それまでは、「新しい水を原子炉にどんどん注いで、原子炉から出てくる(汚染された)水をどこかにためておく」というやり方だった。 これだと、汚染された水がどんどん増えていくので、大問題になっていたのだ。 2011 年 7 月以降の方法では、原子炉から出てきた汚染水をある程度きれいにして、その水をまた原子炉を冷やすのに使っている。 だから、汚染水がどんどん増えていくということはなくなったというわけだ。

それでも、汚染水を浄化するときにフィルターが放射性物質に汚染されてしまう。 そのフィルターの処理は大きな問題だ。 また、冷却のための仕掛けも、かなり急ごしらえのものだから、トラブルや故障は多いようだ。 実際、2011 年 9 月には、「循環注水冷却」に移行したあとも、かなりの量の汚染水が地下に漏れだしていることが報告されている。道はまったく平坦じゃない。

また、冷却がうまく行っているとはいっても、中の様子がちゃんと分かって冷やしているのは、4 号機の使用済み燃料プールだけ。 3 つの原子炉については、原子炉の中がどうなっているか、とけ落ちた燃料がどこでどうなっているかは誰も知らない。 「中の様子はよく分からないけれど、ともかく外から水を入れて冷やし続けている」というのが現状だ。

原子炉の近くでは放射線量もとても高く、人が長いあいだ作業することはできない。 だから、3 つの原子炉での状況がこれからすぐに大幅に改善するということは期待できないと思う。

最近では、冷却の仕掛けを改良したり、原子炉をカバーで覆ったりと、原子炉を安全にするための色々な作業が進められている。 政府では、原子力発電所の状況が急に悪化する可能性は低くなったとして、2011 年 9 月 30 日に緊急時避難準備区域の指定を解除すると発表した(緊急時避難準備区域は福島第一原子力発電所から 20 キロメートル以上離れているが、およそ 30 キロメートル以内の地域。こちらの地図を参照)

しかし、原子炉が本当に安定してきていると考えるのは危険だと思う。

福島第一原子力発電所での最近の工事は、すべて、高い放射線量の中、限られた時間のなかで応急措置的に進められていることを忘れてはいけない。 じっくりと安全な設計をして時間をかけて施工するのとはまったく話がちがうのだ。

勝手に事故を起こして爆発するという可能性は今ではかなり小さくなったと思う。 けれど、また大きな地震や津波におそわれるという(あり得ないとは決して言い切れない)事態を考えると、まったく安心できない。 今の、仮ごしらえの冷却システムやカバーが大災害に耐えられるとは考えられない。 そうすると、またしても放射性物質が周囲にまき散らされることになる。 過度に悲観的になることはないが、こういう可能性があることは頭に置いておくべきだと思う。

実際、2011 年 9 月には、原発の配管のなかに水素ガスがたまっているのが発見された。 東電は爆発の危険はないと発表しているそうだが、パイプの中に水素ガスがたっぷりあり、その周囲の空気中には酸素がたっぷりあるのだから、条件がそろえば爆発はありうる。 すでに現場では対応が始まっていると思うし、なんとか無事に水素を窒素で置き換えられることを願っている。 いずれにせよ、こういう「予想外の危険」はこれからも何度も何度も生じてくると思っているべきだろう。

これをここに書くのが適切かどうかよく分からないのだが、ぼくは、現場で作業している人たちのことも心配だ。

事故をおこした原発で仕事をすると(何もなくても大変な仕事だろうが)高い放射線にさらされて、多くの放射線を浴びる(被ばくする)ことになる。 被ばく量が多くなりすぎると健康に影響がでるから、作業をする人たちの被ばく量はきちんと測定しなくてはいけない。

ただ、話はそれだけではないようだ。 被ばく量が多くなると、決まりに従って、その人はもう原発では作業できなくなる。 東電の社員なら別の仕事を割り当てられるだろうが、下請け会社に雇われているような人たちの場合、被ばく量が限度を超えると単に仕事を失ってしまうこともあるらしい。 これは本当に気の毒な話だ。

2011 年 7 月のはじめに、福島第一原発で働いていた人たち千人以上と連絡がとれないというニュースがあった。 その人たちは、実は偽名で登録して働いており、被ばく量が高くなったので別の名前で登録し直して今も働いているのではないかという噂がある。 ぼくにこの噂の真偽は判断しようがないが、万が一本当ならばおそろしい(あってはならない)ことだ。

上でも書いたように、福島第一原発での作業は、すでに、東京電力のような企業が管理するレベルのものではなく、日本政府が国の重大事態として対処すべきレベルになっている。 作業員の確保、かれらの健康管理、そして、被ばく量が限度を超えた際の雇用の保障など、国がしっかりと対応すべきなのだ。

原子力発電所が「冷温停止状態」になって事故は「収束」したのか?

2011 年 12 月 16 日、政府は事故をおこした原子力発電所が「冷温停止状態」になったとして、事故は「収束」したと宣言した。

しかし、これはほとんど中身のない、ただの「言葉遊び」に過ぎない。 どう考えても、原子力発電所事故はまったく収束などしていない。 どんなに言葉巧みに説明しようと、あるいは、それで人々を納得させたとしても(←たぶん、みんな納得していないと思うけど)、それによって事故の現実が変わるわけではないのだ。

ぼくは「急進的な反原発主義者」でも「過激な反体制派」でもない。 わりと温厚なおじさん(の科学者)のつもりだ。それでも、こういう口先だけの宣言には強い怒りを感じるし、それ以上に、心底がっかりして悲しくなる。

「冷温停止」というのは、普通は、運転を停止した原子炉の燃料棒の温度が 100 度以下まで下がった状態を言う。 当然、原子炉はあるべき姿をしていて、通常の冷却システムが動いていて、温度計などの測定計器もちゃんと動作していることを前提にした言葉だ。 確かにそういう状況であれば、「冷温停止」は原子炉が「安全に止まった」という一つの目安になる(ただし、冷温停止のあとも燃料棒からの発熱は続くので、冷却は必要)。

一方、福島第一原子力発電所の 1, 2, 3 号炉では、炉心はとけ落ち、容器は破損し、中の様子がどうなっているのか誰にもわからない。 冷却システムは急ごしらえの不完全なものだし、(そもそも中の様子がわからないくらいだから)燃料棒の正確な温度などわかるわけもない。

そのような「ボロボロの原子炉」について「冷温停止」とはどういうことなのだろう?  なんらかの方法で推測した燃料棒の温度が 100 度以下になることを言っているのだろうが、それは、本来の意味での「冷温停止」とはまったく別の状況だ(なので、政府は「冷温停止状態」という新しい言葉を作ったのだろうか??)。 相変わらず中の様子はわからないし、冷却システムは不完全だし、燃料を安全に処理する見通しもないままで、勝手に「冷温停止」を宣言したとしても安全が確保されたわけでもない。

政府は、そういった「言葉遊び」をすることで、人々にあたかも事故が解決しつつあるような感覚を持たせようとしているとしか考えられない。 限りなく情けない話だし、やはり、それを許してはいけない。

また事故があって放射性物質漏れたら?

3 月にけっこう爆発があって(といっても、原爆とはちがう、小規模の爆発)、まわりに放射性物質がばらまかれた。 その後、炉心そのものは(溶け落ちているものの)かなり冷えてましな状態になってきている。でも、そのかわり、まわりの容器とかがボロボロになってきている可能性がある。

だから、可能性は低いけれどヘタをするとまた急に爆発などがあるかもしれないし、上にも書いたように、地震や津波などの災害があれば再び放射性物質が外に漏れるかもしれない。 もちろん、そんな事態はないことを祈っている。でも、万が一とはいえ、いざという時のことは考えておいたほうがいいだろう。

原子炉で爆発などの事故があると、原子炉から放射線と放射性物質がでてくる(この二つの区別については「放射線とか放射能ってなに?」で説明する)。 放射線はすごいスピードで飛んでくるけれど、空気のなかを進むあいだにたちまち弱くなる。だから、原子炉から直接でる放射線のことは(現場の人たち以外は)まったく心配しなくていい(現場の人たちは本当にたいへん。万が一でも大きな被ばく事故がおきないようしっかりとした安全対策を望む)。

一方、放射性物質のほうは、風に乗って運ばれるので遠くまでやってくる可能性がある。 風が運んでくるまでには時間がかかるので、そのあいだを利用して、すばやく建物のなかに逃げるのがいい。

爆発のニュースを見てあわてて車や電車で脱出するのはやめた方がいい(もちろん、ぼくもしない)。 大勢の人がいっせいに逃げようとすると、ものすごい渋滞や混雑がおきる。 ヘタをすれば事故がおきるかもしれない。 もちろん逃げ出せる人も何人かはいるだろうけど、渋滞や混雑や事故に巻き込まれて、よぶんな被ばくをしたりケガをしたりする危険はかなり大きいと思う。

建物のなかに避難したら、窓を閉め切って換気を切る(普通のエアコンは換気しないけれど、最近は、換気機能のあるエアコンもあるらしい。自分の家のエアコンがどういうタイプか、換気を切る方法があるのかを調べておくといい)。 それだけで、放射性物質を吸い込むことによる被ばく(内部被ばく)はかなり防げる。 もしできればコンクリートの壁の建物に逃げ込んだほうが、壁で放射線が弱まるので、なおよい。

万が一、タイミングが悪くて放射性物質が体についてしまっても、シャワーを浴びて髪を洗えば放射性物質は落ちる。 体にずっとつけていなければ、被ばくは小さいから心配しなくていいと思う。 なお、放射性物質というのは特別の外見をしているわけではなく、ごく普通のホコリやチリに含まれている。 放射性物質をあびてしまったかどうかは自分ではわからないので、不安だったら、シャワーを浴びればいいと思う。

そうやって、いったん屋内に避難したあとで、テレビ、ラジオ、ネットなどで事故や汚染の情報を調べて、そこから先の行動を考えるのがいいだろう。 汚染のひどいところにずっと留まっていると、時間に比例して被ばくしていく。 考えたくないことだが、その時点で本当に汚染がひどい、あるいは原発が不安定だということが判明したら、数日あるいは数週間のうちに脱出しなくてはならないことになるかもしれない。 その場合にも、決してあわてすぎず、脱出中に事故にまきこまれないよう細心の注意をしてほしい。

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