「学習院VISION150」が目指すところ

創立150周年を迎える2027年に向かって学習院の目指す姿を描いた中期計画「学習院VISION150」。
そこに掲げられたミッション、ビジョン、そして育む人材像などを平野専務理事にわかりやすくお話していただきました。

リーダー的マインドを持った人材育成のために

インタビュアー
「学習院VISION150」策定の目的は何ですか?
平野
グローバル化を始め変化の著しい現在の社会において、学習院の教育をさらに発展させていくために、事業計画と財政計画を連動させて、学校としての望ましい将来像を現実のものとしていくことを考えました。院全体のミッションと150周年に向けてのビジョンのもと、幼稚園、初等科、女子中等科・女子高等科、中等科・高等科、女子大学、大学の各学校と法人本部がそれぞれ具体的に何をしていくかの計画を立案し、毎年度の行程表を作り、進捗状況をホームページで公表していきます。併せてガバナンスのチェック体制も整備し、コンプライアンスの遵守を徹底していきます。


この計画が実現すれば、創立150周年を迎えた時に、学習院が今よりもさらに素晴らしい学びや研究の拠点として世界から評価されるはずだ、という熱い思いがあります。歴史と伝統とを受け継ぎながら、時代を超えて羽ばたく人材育成を行い、未来の学習院を創っていきたいですね。
インタビュアー
では具体的な内容についてお聞かせください。
平野
まず学習院のミッションとして「ひろい視野たくましい創造力 ゆたかな感受性 を育む」を掲げています。自分の周りの世界に興味を抱き問題を見出すために必要な広い視野、いろいろな人のそれぞれの感じ方を受け止め思いやる豊かな感受性、なりたい人間になり、あるべき社会を作るためのたくましい創造力。これは、半世紀前からずっと学習院の教育理念として謳われてきたものです。
またビジョンは、「社会に飛躍 グローバルに活躍 未来へ躍動する学習院」です。どのような時代にあっても、またどのような課題が立ち塞がっても、それを乗り越えて活躍していける、豊かな人間性とリーダーとしてのマインドを持った人材を育成する学校となる、ということです。もちろん、その根底には学習院の一貫教育の柱である「自重互敬」や「正直であれ」といった教えがあります。これらは、持続可能で多様性に開かれた今後の社会を担っていく上で、どうしても必要な資質だと考えています。
その上で、時代に則した課題やニーズから、より具体的に6つのキーワードを設定しました。「情報化」「国際性」「ダイバーシティ」「日本の文化」「SDGs」「ポストコロナ」です。
インタビュアー
「自重互敬」「正直であれ」はまさに学習院らしさと言える教育の柱ですね。
平野
お互いに尊重し合い、思いやる。人に正直、自分にも正直であれ。連綿と受け継がれている教育の柱であり、またそれなりに強さを要求する言葉だと思います。正直とは嘘をつかないだけでなく、時には信念を貫く強さやブレのない姿勢を要求します。また、人を思いやるには、相手の立場についての想像力を働かせることが必要でしょう。学習院は一貫教育の学校です。これは、幼稚園から大学まで「どの学校から入ってどの学校で出ても」学習院で学んだことがその人の中にしっかりと根付き、やがて大人になり自分の目指す道に進む時、人生において何かの壁にぶつかった時、必ずその学びがその人の支えとなり、目標へと導いてくれる、ということを意味しているのです。

教育のバトンが未来のポテンシャルを高める

インタビュアー
「学習院VISION150」が到達する2027年、学習院はどんな姿になっていると思われますか?
平野
そこで学ぶ者が、それぞれの年齢に応じて自分の夢や目標を生き生きと語り、お互いに認め合い切磋琢磨し、自分がなりたいと思うような人間になるための様々な機会を得ることができる場です。時代の不確実性はますます大きくなっているでしょうが、そうした社会においてこそ、学習院の卒業生に対する世の中の期待はさらに高まると期待しています。
私の専門である政治心理学では「どのような社会を人々は幸せな社会だと考えるか」も一つのテーマになっているのですが、「学習院VISION150」は、まさに自分も人も幸せにするようなリーダー的人材を育てる学校となるための中期計画だと思います。
インタビュアー
創立150周年の大きな節目という意義については、どのようにお考えですか?
平野
気の早い話ですが、創立200周年に向けてのスタートとして位置づけたいと思います。というのも、現在の学習院は明治10年の開設以来の先達たちのおかげで成り立っており、多くの卒業生、ご父母、関係者の皆様のご助力の賜物です。そのご恩に報い、次の50年を見据えて新たなミッションに取り組む節目の年と考えています。学習院の院歌はおよそ70年前にできましたが、開設当初から受け継がれてきたものを、その時その時の環境に応じてどう生かしていくのかを考えるヒントに満ちています。例えば3番の歌詞にある「荒波よ狂はば狂へ 黒雲よゆくてはとざせ 我が胸は希望高鳴る」、試練があってもワクワクして立ち向かうという気概。今回の「学習院VISION150」のキーワードにある「SDGs」や「ポストコロナ」などの課題も、この気持ちで挑戦していけば、必ずや道は開けると希望が湧いてきます。
インタビュアー
皆様にメッセージをお願いします。
平野
学習院の教育は、かつての教職員から現在の教職員へ、大先輩の卒業生から若い卒業生へ、かつてのご父母から現在のご父母へとバトンを繋ぐことで成り立ってきました。そうした中から、これからの世界を創っていく人材が巣立っていきます。中には、それぞれの分野で世界を新たな方向に導くようなリーダーも多く含まれることでしょう。皆様からのご寄付を有効に活用させていただき、今後も学習院がこうした教育・研究を通じて世の中に貢献し続けられるよう学校を挙げて取り組む所存でおりますので、ご支援ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
  • 本記事は、2022年4月に行われたインタビューを掲載しています。

プロフィール

学校法人学習院 専務理事 平野 浩

学校法人学習院 専務理事
平野 浩

令和2年10月より現職。学習院大学法学部教授。学習院大学大学院政治学研究科博士後期課程修了/政治学博士。所属学会は、日本政治学会、日本選挙学会、日本社会心理学会、American PoliticalScience Associationほか。研究テーマは政治意識・政治行動と政治過程、選挙分析、政治心理学の理論。担当科目は、社会心理学演習ほか。

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