当日は、オックスフォード大学で政治学の博士号を取得した後、日本学術振興会のポスドク・フェロー・プログラムで、東京大学社会科学研究所の客員研究員として研究活動をしているShim Jaemin 氏から、日本・韓国・台湾の比較福祉政治というテーマで報告がなされた。報告では、東アジアの福祉制度が欧米とは異なる特徴を有することが指摘され、(1)年金や医療などの社会保障政策のみならず、農業助成や公共事業も「社会保護」を目的とした非オーソドックスな福祉政策と見なし、(2)90 年代以降(韓国と台湾が民主化し、日本で自民党長期政権が崩壊した)の福祉政治の展開を検討するという課題が提示された。三カ国の国会の福祉関連法案(約50,000 本)の分析を通じて、三カ国においては、欧米のような福祉をめぐる保革のイデオロギー対立は見られず、とりわけ韓国と台湾では、超党派の議員による福祉法案が提出されていることが明らかになり、それらが政治制度に規定されている点が提示された。報告に対しては、参加者から、分析時期の問題、法案分類の妥当性、社会構造的要因の重要性などが提起され、活発な議論が行われた。参加者は、教員4 名、大学院生2 名であった。