講師にお迎えした石丸次郎氏は、独立系メディアであるアジアプレス・インターナショナル大阪事務所代表を務められ、北朝鮮取材の第一人者としてご活躍中である。本研究会は、北朝鮮国内から寄せられた貴重な情報を元に、金正恩体制の内実にせまろうとするものであった。
また研究会を前後し、北朝鮮の実質No.2と目されていた張成沢元国防委員会副委員長が粛清されるなど、事態が緊迫化する中での開催となった。
石丸氏は日本のマス・メディアの北朝鮮取材の在り方について、真実を伝える事よりも視聴率を重視する傾向にあるとして批判的に論じ、核心を掴む過程において現場情報を収集する努力を強調する。
他方で北朝鮮という極めて閉ざされた国家においては、現場取材を強行するよりも、内部にパイプを構築する方法が有効である点を指摘するなど、現場を重視してきた同氏の高い取材ノウハウとバイタリティーには改めて活目するものがあったと言える。
北朝鮮は内部告発による相互監視の中で危うい安定を続ける、近く、そして最も遠い隣人である。
この問題は、朝鮮半島のみならず、日本を含めた周辺諸国の連携なしには解決し得ないという事実を再認識する講演であったと言える。