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共同研究プロジェクト

竹綱 誠一郎 教授プロジェクト

『学校場面における児童・生徒のself-regulationシステムに関する研究』
The self-regulation system of pupils and students
[Prof. Seiichiro Taketsuna]

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1. 目的・内容・期待される効果など

 本研究の目的・内容・意義:self-regulation理論とは人間の自発的で自律的な動機づけメカニズムを体系的にとらえたものであり、教育実践場面や臨床場面においてその理論の有用性が確認されつつある。本研究の目的は、児童・生徒のself-regulationシステムについて、学習意欲や退学に関する教育心理学的アプローチを中心に、不登校や高校中退に関する臨床心理学的観点および自発的なボランティア活動に関する教育学的観点から、多面的に検討することである。長期的にデータを収集することによって因果論的に明確で、本邦の教育場面に適合したモデルを提案したい。新指導要領による教育内容の精選のために児童の学力低下が起こるのではないかという懸念がある。ゆとりのある教育を強調するこのような状況において児童の基礎的学力を保証していくためには、児童自らが学ぼうとする動機づけをもつことが重要である。また、中学校や高校における生徒の怠学や退学の問題も、自律的な動機づけの欠如としてとらえることができる。一方、自発的に学習活動に取り組んだり、ボランティア活動に関わる児童.生徒も数多くおり、彼らの行動はまさに自己調整的な動機づけに基づくものと言える。self-regulation理論は、児童・生徒の多様な行動を動機づけメカニズムとして包括的に体系的にとらえるものである。これまでに欧米での教育実践場面や臨床場面での成果は報告されているけれども、本邦独自の問題に対応するための修正が必要だと考えられる。14年度は教育心理学、臨床心理学、ボランティア学の専門家による講演会を3,4回実施し、さらに児童のself-regulationを重視した特徴のある実践を行っている学校現場の視察も行う予定である。講演会と視察で得られた示唆にもとづいて、15年度と16年度は、児童・生徒を対象に継続的な調査を1年半程度の長期間実施し、児童・生徒のself-regulationシステムに関する具体的な知見を得るつもりである。

2. 研究スタッフ

【プロジェクト代表】
・竹綱誠一郎:学習院大学文学部教授(心理学科)

・山本政人:学習院大学文学部助教授(心理学科)
・長沼 豊:学習院大学教職課程助教授
・鎌原雅彦:千葉大学教授
・小方涼子:学習院大学文学部助手(心理学科)
・鎌原雅彦:埼玉工業大学教授
・弓削洋子:鳴門教育大学助教授
・高木尋子:神奈川県伊勢原市教育センター・カウンセラー
・荒井志世:(財)安田生命社会事業団すこやか育成相談室心理相談員
・安藤聡一朗:学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士後期課程
・徳富政樹:学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻博士後期課程

活動年度:2002年度~2004年度

14年度:5回の例会、および1回の講演会(「児童・生徒のself-regulationを育てる授業・活かす授業」)を行った。また11月には総合的学習や体験的学習の教育実践で成果をあげている京都市立高倉小学校および京都市立朱雀第二小学校を訪ね授業を視察した。(詳細は『人文科学研究所報』2002年度版をご参照下さい。)

15年度:今年度は、本プロジェクト3年計画の2年目である。前年度に収集した情報に基づいて、具体的な調査計画と実験計画の立案と実施の段階に入った。児童・生徒のself-regulationシステムのモデル構築のために、「質問紙による調査」、「実験的研究」および「授業観察等の質的データの分析」の3とおりのアプローチをとることにした。 そのために、今年度は全スタッフによる例会と担当チームごとの打ち合わせ会の2とおりの会合を並行して実施した。 質問紙調査は 竹綱・小方・鎌原が中心となり、中学生の学習活動におけるself-regulationモデルを想定し、そのモデル検証のための質問紙を作成した。質問紙調査は、2004年1月~2月に実施する予定で、協力校との折衝をしているところである。 実験的研究は徳富が中心となり、Zimmerman & kitsantsa(1997)およびSchunk &Ertmer(1999)の研究を参考にして、大学生が新規課題を取得するプロセスにおいてself-regulationシステムがどのように機能するかについて研究計画を立て、2004年2月より実験を開始する予定である。 授業観察による質的データからのアプローチは弓削が中心となり、日常の教室場面における児童・生徒の個々のself-regulation システムを把握するための方法を検討中である。 (例会の日程等、詳細は『人文科学研究所報』2002、2003年度版に掲載されています。)

16年度:2004年度は以下の3つ活動を行った。1つ目は、前年度に実施した質問紙調査による研究成果を、2004年10月9日~11日に富山大学で行われた日本教育心理学会第46回総会のポスターセッションにおいて2つの発表を行ったことである。 2つ目は、授業実践(授業観察)、教師の実践発表(発表会への参加)、講演会(主催)および教育実践研究(文献)によって、self-regulationを育てる実践例を収集したことである。 3つ目は、2つの大学の学生を対象に、高校時代の学習への取り組み方を尋ね、自由記述形式で回答してもらう調査を実施したことである。(それぞれの活動の詳細は『人文科学研究所報』2004年度版に掲載されています。)

4. 今後の活動予定

本プロジェクトは、2005年3月31日を以て終了いたしました。
ご協力下さった皆様に厚くお礼申し上げます。

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