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共同研究プロジェクト

大貫 敦子 教授プロジェクト

『Figuration概念による文化的表象の分析と文化研究の教育モデルの開発』
Analysis of Cuitural Representations through〈Figuration〉,and its Application for Teaching〈Cultural Studies〉at the Graduate School
[Prof. Atsuko Onuki]

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1. 目的・内容・期待される効果など

 本研究の目的・内容・意義:本研究は、「文化」を静態的な実体として捉えてきたこれまでの文化比較・文化理論に対する批判的視点に基づき、文化的表象の意味付与作用に着目して動態的に分析する方法を開発することを目指す。その際にキー概念となるFigurationは、ジェンダー差異、文化的差異、身体、他者イメージなどの文化的表象が感知される際の諸々の形象(Figur)が、意味付与作用の遂行的(パフォーマティヴ)な反復によって特定集団において意味を獲得するプロセスを表す。Figuration概念に基づいた文化表象分析は、表象の意味付与作用が遂行される「場」として文化諸領域(文学テクスト、演劇、映画、舞踊など)を捉えることにより、メディア横断的な文化研究に道を拓くものである。さらに「文化的他者」の表象をFigurationの遂行的行為として分析することによって、これまでの文化概念およびそれに基づいた文化比較に内在する権力作用を明らかし、文化比較をFigurationの相互作用として見るインター・カルチュラルな文化研究へと転換する方法論の基礎付けを行う。

 これまでの文化研究において文化圏別および個別領域的に細分化されて扱われてきた現象を、領域横断的に再編することは現在の文化研究にとって急務である。 Figurationの観点から「文化」概念の再考を行うことは、この再編に不可欠であると思われる。すでにFigurationを有効な分析概念として研究のみならず教育にも応用しているドイツの文化研究者との共同研究は、この再編にとって有意義である。本研究は、多分野にわたる研究者が Figuration概念に基づいて、文化研究の再考の試みを実際に行うと同時に、その有効性を検証する形で進める。この共同研究によって、研究者次元での新たな方法論の開発にとどまらず、大学院のカリキュラムにも応用可能な、文化研究モデルを作ることが目的でもあり、また期待される成果でもある。

2. 研究スタッフ

【プロジェクト代表】
・大貫敦子:学習院大学文学部教授(ドイツ文学科)

・トーマス・ペーカー:学習院大学文学部教授(ドイツ文学科)
・渋谷 哲也:学習院大学非常勤講師
・ガブリエレ・シュトゥンプ:東京大学教養学部講師
・縄田 雄二:中央大学文学部助教授
・石田 雄一:中央大学法学部助教授
・前田 良三:立教大学文学部教授
・ヴァルター・ループレヒター:東京都立大学人文学部助教授
・山口庸子:名古屋大学大学院国際言語文化研究科助教授

活動年度:2003年度~2004年度

15年度:年間5回の研究会を開催した。また10月25,26日の両日にわたってシンポジウム(総合テーマ:プロセスとしての文化と文化研究)を開催した。
10月25日:figuration概念の導入による文学テクスト研究の新たな展望(ドイツ語のみ)
発表者:ゲアハルト・ノイマン(ミュンヘン大学)、大貫敦子(学習院大学)、石田雄一(中央大学)、マールクス・ハレンスレーベン(ブリティッシュ・コロンビア大学)
10月26日:ダンスの「身体性」-身体表象の構築・脱構築、そしてその後(日独同時通訳)
発表者:山口庸子(名古屋大学)、縄田雄二(中央大学)、ガブリエレ・ブラントシュテッター(ベルリン自由大学)、貫成人(専修大学) (ここまでの内容は「人文科学研究所報」2003年度版に詳細が掲載されています)
3月24日~27日にかけてドイツ・ジーゲン大学のHyunseon Lee氏を招いてセミナー・講演会を行った。
3月24日:セミナー「欲望のフィギュレーション:画像、他者性、オリエンタリズムの人間学」(邦題)
3月25日:報告「ジーゲン大学の文化学プロジェクトについて」
3月26日:討論「メディア論を機軸とした文化学の展望」
3月27日:講演「黒澤明のシンボル世界:戦い、男性像およびサムライの極端な自我(邦題)」
16年度:文化的他者の認知に伴うFigur、および言語表現におけるFigurを重点項目として定期的研究会を行うとともに、この分野で実績のある研究者と、9月18-20日にはコロキアムを開催した。
また、文化的他者の認知とフィギュレーションのテーマについて、11月7日-13日までアレクサンダー・シュテファン教授(オハイオ大学)との共同セミナー、および講演会を、さらに2月19日、20日の2日間にわたって、文化記述と文化的他者表象の形成に関わるフィギュレーションをテーマとしてコロキアムを開催した。
(詳細は『人文科学研究所報』2004年度版に掲載されています)

4. 今後の活動予定

本プロジェクトは、2005年3月31日を以て終了いたしました。
ご協力下さった皆様に厚くお礼申し上げます。

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