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共同研究プロジェクト

篠田 彰 教授プロジェクト

『アルツハイマー型痴呆症のモデルラットによる基礎的研究』
[Prof. Akira Shinoda]

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1. 目的・内容・期待される効果など

 アルツハイマー型痴呆症(AD)は記憶障害を主症状とする各種の精神状態を伴う。これらヒトの精神状態改善への対応は臨床心理学の問題であるが、ADの神経生理的、心理的基礎が明らかになればより適切な対応が可能となろう。最近、ヒトを対象とした疫学的研究や薬学治験的研究により、加齢にともなう脳内エストロゲンレベルの低下がADの発症と密接な関係にあるのではないかとの推定がなされるようになってきている。しかし、各種条件を厳密に統制できる動物を被験体にし、この関係を追求した基礎的研究は現在まで行われていない。そこで本研究ではラットを被験体としてADのモデル動物を作り、ADモデル動物においてエストロゲンが記憶や学習機能に対しどのような効果を持つか、また効果があるならばその作用メカニズムはどのようなものであるかを追究することを目的とする。

 AD患者の脳内では記憶機能と密接に関わるコリン作動性神経の障害が顕著である。そこでコリン作動性神経を特異的に傷害する神経毒AF64Aをラットの脳室内に注入し、海馬周辺のコリン作動性神経に障害を与え、ADのモデル動物とする。これらの動物に卵巣摘出、エストロゲン(estradiol-17β)を封入したサイラスィックチューブを皮下に埋め込むなどの手術を行い、体内のエストロゲンレベルを実験的にコントロールする。上記のような処置をしたADモデルラットに認知機能と密接に関係する放射状迷路課題を行わせ、空間記憶障害に対するエストロゲンの効果を検討する。またシャトルボックスを用い条件性回避学習を行わせ連合学習という側面からもADモデルラットの記憶機能に及ぼすエストロゲンの効果についての評価を行う。行動実験終了後、免疫組織学的方法によりラット脳内のコリン作動性神経の残存する神経細胞を観察し行動的データとの照合を行う。

2. 研究スタッフ

【プロジェクト代表】
・篠田 彰:学習院大学文学部教授(心理学科)

・吉川眞理:学習院大学文学部助教授(心理学科)
・筒井雄二:福島大学助教授
・桑名俊徳:学習院大学非常勤講師(2005年度より)

3. 活動報告

16年度:実験の効率化、省力化を念頭に置き、ラットの記憶能力を測定できるような放射状迷路実験に替わる新しい実験法の開発を試みた。また、4回の研究打ち合わせ会で、実験計画や実験結果の検討を行った。
17年度:実験1「継時遅延見本合わせ課題を利用した記憶実験」、実験2「継時遅延見本合わせ課題の遂行に及ぼす前脳基底部破壊の効果」を実施した。

4. 今後の活動予定

本プロジェクトは、2006年3月31日を以て終了いたしました。ご協力下さった皆様に厚くお礼申し上げます。

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