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共同研究プロジェクト

安部 清哉 教授プロジェクト

『日本語方言における「呼気」の測定と地域差に関する記述的研究』

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1. 目的・内容・期待される効果など

 日本語の音声研究や方言研究では、しばしば「呼気(の強弱)」の問題が取り上げられるが、厳密な定義やそれらの実際の測定記録、また、その個人差地域差の研究がほとんどない。「呼気」を厳密に定義していくと、「声門下圧」「声門上圧」「口腔呼気流量」「音声量」「鼻音化率」「口腔鼻腔呼気流量比率」などの異なる実態がある。本研究では、曖昧なまま漠然と使用されている「呼気」の実態を厳密に規定し、特に、圧力、流量、音量の観点から、医療音響関係の測定機器によってさまざまな「呼気」の計測を実測すること、その日本語方言における地域差を記録することを目的とする。特に、高年齢者の伝統的方言音が衰退しつつある現在、その緊急な調査は重要な意義をもつ。
 「呼気(の強弱や相違・変化)」は、これまで子音、母音、アクセント、清濁、音便、方言音など日本語音韻史において、しばしば変化の要因や音声的相違の根本的要素として取り上げられる現象であったが、曖昧な表現に留まることが少なくなかった。しかし、そのような主観的で曖昧な使用であるということが十分認識されておらず、かつ、客観的計測データがないという根本的問題がある。「呼気」の上記のような多様な側面の実態を、発話条件や音声条件、地域の相違ごとに実測し、客観的数字で記録提示することは、データとして貴重であることはもちろん、そのような問題点を指摘する上で重要であり、また、今後の音声解釈や音韻史の解釈に客観的で新しいデータを提供できるという点においても、意義深い研究と位置づけられる。

2. 研究スタッフ

【プロジェクト代表】
・安部 清哉:学習院大学文学部教授(日本語日本文学科)

・長嶋 善郎:学習院大学文学部教授(日本語日本文学科)
・上野 善道:東京大学教授
・佐藤 亮一:東京女子大学教授
・大山   玄:学習院大学人文科学研究所客員所員

3. 活動報告

17年度:①「呼気」の測定装置の検討、②装置での「呼気」測定内容の検討、③購入可能な測定装置を目的に沿う順に購入し、「呼気」の測定方法の検討、及び、一部の予備的実験を行った。また、装置がそろったところで、全体研究会を開き、それぞれの機能について検討し、測定の問題について検討した。(詳細は『学習院大学人文科学研究所報』2005年度版に掲載されています)
18年度:8回の研究会(講演会含む)を開き、実験調査等を行った。また、延べ32名の被験者のデータ収集を行い、現在も継続中である。(詳細は『学習院大学人文科学研究所報』2006年度版に掲載されています)

4. 今後の活動予定

本プロジェクトは2007年3月31日をもって終了いたしました。ご協力下さった皆様に厚く御礼申し上げます。

5. 今後の活動予定

研究成果が『人文』10号の下記論文に掲載されています。

あべせいや「東アジア言語(日本語・中国語・朝鮮語)の南北方言の 音韻対応から推定された紀元前約1 万年前の「呼気量変化」(口腔鼻腔流出量比率変化)とその要因について」『人文』10号、7‐33頁<ヨコ組>

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