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共同研究プロジェクト

酒井 潔 教授プロジェクト

『ライプニッツ『モナドロジー』の政治哲学的射程に関する歴史的総合的研究』

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1. 目的・内容・期待される効果など

ライプニッツの『モナドロジー』は従来形而上学か論理学の関心からのみ解釈され、「モナド」が「独立した個人」という政治哲学的主張を含意する可能性への言及はほぼ皆無であった。本研究はこの『モナドロジー』の政治哲学的射程を問う。本研究は『モナドロジー』の新しい読解モデルを提起し、これまで注視されなかった(ホッブズやロックとは別の)ライプニッツ政治哲学の立場を解明する点で独自で創造的な研究といえる。本研究は三つの柱からなる:①『モナドロジー』の「実体」概念の正義論的射程の剔出、②同時代の新旧神学における『モナドロジー』への肯定と反論の精査、③1714年夏ウィーンで執筆された『モナドロジー』、『原理』、『ウィーン講演』を三位一体として捉え、その成立事情の歴史的解明。①形而上学、②神学、③歴史、という異なったアプローチからの知見を総合するという総合研究である。

以上のように、形而上学、神学、歴史から研究成果を持ち寄る総合研究であるために、共同研究が必要である。従来は全く考慮されなかったライプニッツの形而上学と政治哲学との関係が、神学や歴史の視点もまじえながら初めて解明できると期待される。合わせて、ホッブズやロックとは別の政治哲学の可能性を新たな選択肢として具体的に提案する。

2. 研究スタッフ

【研究代表者】
・酒井  潔 :学習院大学文学部教授(哲学科)
【所員】
・下川  潔 :学習院大学文学部教授(哲学科)
・高田 博行 :学習院大学文学部教授(ドイツ語圏文化学科)
【客員所員】
・山根雄一郎 :大東文化大学教授
・長綱 啓典 :帝京大学准教授
・枝村 祥平 :金沢青陵大学教授
・増山 浩人 :慶応義塾大学訪問研究員
【リサーチ・アシスタント】
・鈴木 伸介 :学習院大学大学院 人文科学研究科 哲学専攻 博士後期課程
・山中 健義 :学習院大学大学院 人文科学研究科 哲学専攻 博士後期課程
・赤塚  愛 :学習院大学大学院 人文科学研究科 哲学専攻 博士後期課程
・上野 里華 :学習院大学大学院 人文科学研究科 哲学専攻 博士後期課程

活動年度:2018年度

2018年度:研究会6回を実施した。また、デュタン版ライプニッツ全集刊行250年特別学会(2018年12月3日~4日、於・トリノ大学図書館)に研究代表者・酒井が参加し、共同討議を行い、口頭発表「カントはデュタン版全集を用いたのか? 『純粋理性批判』における「モナド」概念の受容」を行った。本プロジェクトの今年度の活動の締めくくりとして。ハルトムート・ルドルフ氏による講演会「ライプニッツの平和と正義の構想」を主催した(2019年2月26日、於・人文科学研究所会議室)。

毎回の研究会において実に多くの収穫があり、その一つ一つが本プロジェクト初年度の成果といってよい。「モナド」の単純性・不可分性、分解と消滅の不可能性、(作用授受のための)窓の否定など一連の形而上学的(あるいは論理的)規定が、個人の尊厳と自己決定と不可侵を骨子とした政治哲学的主張でもあり得ることを、テクストの集中的読解を通じて確認できたことの意義は大きい。故P.ライリー教授が2014年に『モナドロジー』第1節の正義論的意味を提起した後に中断されたままであった、『モナドロジー』の政治哲学的研究の可能性と必然性がいまや十分に確信できるものとなった。(以上の活動の詳細は『学習院大学人文科学研究所報』2018年度版に掲載されています)

4. 今後の活動予定

人文科学研究所での、本プロジェクトは終了いたしました。ご協力くださった皆様にあつく御礼申し上げます。

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