学習院大学 法学部 | 法学科|政治学科

学ぶ法学科講義ピックアップPick Up Lectures

講義ピックアップ:横山久芳
講義ピックアップ:横山久芳

特設演習起業家の目から見た法律

佐瀬裕史教授

Sase Hiroshi

ビジネス・ローへの導入として

 本授業は1・2年生に向けた選択制の特設演習です。テーマは「起業家の目から見た法律」で、起業しようと考えた人が起業して事業を発展させていく過程で、どのような法律問題に遭遇する可能性があるかというストーリーに沿って、様々な法律を眺めていきます。本授業を通して、それぞれの法分野の繋がりを知り、いわゆるビジネス・ローと呼ばれている法分野の導入に位置付けられれば、と考えています。
 実は、学習院大学法学部には、どの分野の法律がどんな内容を扱っているのかといった、法学全体を説明するような基礎的な授業がありません。ですので、本授業が法学入門的な授業の代わりになればいいなとも思っています。授業では時に、どうしても細かく難しい内容を話すこともありますが、「ビジネス関係の法律はこんなものがあるのだな」「こういう法律をピックアップするときには、こんなことを話すんだな」などと、大まかにわかってもらえれば十分です。法学科全体の授業の「見取り図」を意識して、気軽に受講してもらえればと思います。

ビジネス・ローへの導入として

2人の教授で担当する授業

 今年からの新しい試みで、本授業は教員2人体制となりました。私の専門分野は民事訴訟法で、企業が訴訟に巻き込まれたときに必要になるものです。広い意味での民事訴訟法に属する倒産法は、起業が失敗に終わったときの事後処理に関わる法律です。起業してから10 年以内に倒産する企業も少なくないため、倒産法の知識も頭に入れておくことはいいことだと思います。
 もう一人の担当教員の大久保直樹教授の専門分野は経済法です。経済法は、市場における競争を取り扱うもので、起業した企業の譲渡といった企業のゴールや商品・サービスの表示のあり方に関わります。企業の譲渡といった会社の取引は事業譲渡や株式取得、合併など様々な形態があり、まとめて企業結合と呼びますが、独占禁止法とも深く関わってくる分野です。
 そういう意味では、2人の専門分野が違うため、それぞれの得意な分野について、より深い知識を提供できると思います。どちらかの教員がメインで授業を担当し、サブになった教員は授業をフォロー。私はサブについたときにどのようなことを補足すれば、学生にわかりやすく伝わるか、ということを意識するようにしています。

2人の教授で担当する授業

起業に関わる広範な学び

 授業は講義形式で進めます。前週の授業でわからなかったことや質問、感想などを出欠代わりに出していただくのですが、授業の冒頭でそれらに対してのコメントをしてから授業に入ります。1年生には少し難しい内容になるかもしれませんが、具体的な事件や事例を取り扱っていきますので、イメージは湧きやすいと思います。
 扱うトピックとしては、起業の際の注意事項(労働法と知的財産法)、秘密保持契約について(不正競争防止法)、企業形態の選択(商法と租税法)、資金調達(会社法と商法)など。広告規制や株式公開、事業の売買についてなども扱いますし、商法やドメインネームについての授業では、メディアでも話題になったような「炎上事案」などを例に引きながら話を進めます。ほかにも、会社を辞めるときに必要な知識となる競業避止義務(競合する会社への転職や、競合する会社の設立を禁じるもの)の判決文を読んだり、実際に起業した企業の社長を招いての講演など、充実した内容になっているかと思います。

起業に関わる広範な学び

やる気のない学生こそ受講して

 学習院は基本的に少人数の演習科目を取り揃えているので、教員と学生の距離が近く、いろいろなことを聞きやすい環境が整っています。本授業も3・4年生の専門科目やゼミを選ぶ際に、何かのヒントになるかもしれません。
 受講生は約20 人で、8割方が1年生です。1年生でわざわざ演習形式の授業を取るということは、受講生は基本的に真面目でやる気がある学生が多い印象があります。もちろん「本気で起業したいから勉強したい」というやる気のある学生も大歓迎ですが、私自身は実はやる気があまりない学生に受講してほしいと思っています。なんとなく法学部を選んで入学してしまった学生に、「法学部ってこれからこんな授業があるんだ」ということを知ってほしい。今後4年間の勉強の入門編として参加してほしいですね。

教員紹介

受講生の声

自分の将来を考えた時、本当に必要な知識を身につけたい。

 私は高校まで大阪で過ごし、弁護士を志望して学習院大学法学部法学科に入学しました。もともと小学生の時にヘルマン・ヘッセの『車輪の下』を読んで法律に興味を持ったことが、弁護士になりたいと思った原体験です。幼少期から裁判や判例を読むことが好きになり、法律を本格的に勉強したいと思うようになりました。
 学習院は著名な教授も多く、少人数制授業も充実しています。学生数が多いマンモス大学だとどうしても、教授と学生の間に距離があるかと思いますが、学習院は授業後に教授にわからないところを質問しに行くと、とても親身になって話を聞いてくださいます。
 特設演習の授業を取ったのは、自分が将来、弁護士として独立し、事務所を立ち上げた時に関係してくる内容だと思ったからです。正直、この授業の内容は法律を学び始めたばかりの1年生にとっては難易度が高めで、学ぶ内容もボリュームがあります。佐瀬先生と大久保先生から事前にレジュメと条文などの資料をいただきますので、私はそれらを読んで予習をしています。法律的な部分は自分でも調べるなど、予習の内容も高度になると思います。多くの知識を提供していただくのですが、授業進度も早いので、内容を理解しながら授業についていくことはなかなか大変ですね。
 1年生だと主に、憲法・民法・刑法の基本的な分野の授業がほとんどになります。これらはすべての基礎になるので、もちろんしっかり勉強しないといけませんが、現在の自分自身からは少し遠い、大きな概念の学問です。一方、起業家の目から見た法律を扱うこの授業は、かなり現実的な内容なので、実践的な法学を学べる点が良いところだと感じています。実際にあった事件や企業など、具体例を出してわかりやすく説明してくださるので、難しい内容でもとてもイメージがしやすい。実際に法律を学ぶ意義も感じられ、勉強するモチベーションも上がります。