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学ぶ政治学科講義ピックアップPick Up Lectures

講義ピックアップ:三輪洋文
講義ピックアップ:三輪洋文

日本政治過程論Ⅱ

三輪洋文教授

Miwa Hirofumi

比較政治学の視点から考える

 日本政治過程論Ⅱは、戦後の日本政治が辿ってきた過程を比較政治学的な観点から学んでいく授業です。言い換えるなら、日本で起きている政治現象を日本だけのことと捉えるだけではなく、他国と比べてどのように位置づけられるのか、あるいは、他国にも当てはまる一般的な現象といえるのか、などを考えていくわけです。
 日本政治に関する他大学の授業では、特定の政治家の動向や政局、特定の法案に関連する議論の推移など、時事的知識を学ぶことも多いかと思います。あるいは「日本で長く政権交代が起きなかったのは、政治的対立を避ける日本人の気質によるものだ」という文化論的説明や、「2023年9月の人事で岸田首相が茂木敏充氏を留任させたのは、翌年の総裁選のライバルになりうる茂木氏を牽制するためだ」という政治家個人のパーソナリティや人的つながりに基く説明がなされることもあります。しかし、このような話は日本政治を見ていくうえでひとつの側面ではあるものの、日本政治の説明だけにしか役に立ちません。日本の特定の時代の特定の現象に対する、ピンポイントな説明にしかなっていないのです。
 いっぽう、比較政治学的な理論は、日本以外の事例や将来の事例にまで適用できます。例えば、日本の衆議院は単記非移譲式投票(中選挙区制)という世界でも稀に見る特殊な選挙制度を採用していましたが、これも他国と比較することで、問題点や改善点が見つかります。もし他の選挙制度を使っていたら違った結果になっていたかもしれないし、現行の選挙制度も違う制度を採用したほうがよりよくなるかもしれない、といったように、日本政治の将来を見通すヒントにもなり得るのです。
 時事的な知識は大学を卒業して更新しないままでいると、すぐに古くなり、価値が下がってしまうものです。ですが、普遍的に適用可能な理論を学んでおけば、卒業して10年、20年経ってもなお、陳腐化することはないはずです。

比較政治学の視点から考える

実証的な分析データから読み解く

 私の本来の専門は、統計分析を使った、現代日本の有権者の意識や行動、特にイデオロギーの研究です。ですので、もうひとつのこの授業の大きな特色として、実証的な分析データをたくさん使用している点も挙げられるでしょう。あるひとつの理論や学説について説明をする際には、必ずその裏付けとなる図や表が出てくる、という形で授業を進めています。
 特に、計量分析(数量的なデータの統計的な手法による分析)の結果を多く提示しています。そう言うと、とても難しく感じるかもしれませんが、統計学の予備知識は必要ありませんし、皆さんに数学的な能力を要求することもありません。数学ができたほうがもちろん理解しやすくなるとは思いますが、数式がわからないと単位がとれない授業ではありません。私が知ってほしいのは、政治学は皆さんが思っている以上に、きちんとデータ分析を行って発展しているということなのです。

実証的な分析データから読み解く

論理的思考力を強化できる授業

 私の授業は教える分量が多いかもしれません。1年生から4年生まで受講できる授業ですが、学生からは大変な授業で難しいなどと思われることもあります。ただ、もし私が学生だったら受講したくなるような、充実した授業を提供している自負はあります。また、大学院に進学する学力が十分につくような授業になっているとも思います。
 毎回、講義形式の授業が終わった後には、理解度を確認するために、小テストを受けてもらっています。基本的には試験の比重が大きい授業になりますが、加点要素としてレポートを出してくれるやる気のある学生もいます。
 この授業の最終的な到達点として私が考えているのは、日本政治を比較政治学的な観点で捉えることができるようになり、政治学の実証研究による結果を読み解けるようになること。しっかりと授業を理解していけば、日本の有権者の政治意識・政治行動の特徴、三権を担う機関の実態、マスメディアと政治の関係など、多岐にわたる事象について、説明できるようにもなるでしょう。一般的な理論を日本という具体的な事柄に当てはめて考えられる力、いわゆる論理的思考力を、一年間かけていっしょに身につけていきませんか。

 論理的思考力を強化できる授業

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